暮らしの軸があってこそ、存在する余白。今の自分にとっての余白が、子どもたちの未来の軸になったら 〜 高橋園芸センター 高橋広樹さん 〜
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草加市を縦断する鉄道、東武スカイツリーライン獨協大学前<草加松原>駅からバスで10分ほどの場所に、草加煎餅「丸草一福」の本店があります。 バス通りからも確認できる円形の看板を目印に敷地内へ足を踏み入れると、店舗と手入れされた庭、その先には住居や工場などの建物が点在し、まるで旅先の旅館を訪れたかのような空間が広がっています。
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「丸草一福」では、その年にできた埼玉県産のお米を玄米で仕入れ、精米・製粉したてのお米から生地を作ることで、他にはない米の甘味を感じられるお煎餅を作っています。
3代目の高橋元一さんは、先代から続く"お米にこだわったお煎餅"を継承しつつ、新しい試みにもチャレンジしています。
「草加煎餅と一口に言っても、それぞれ特色があるんです」
草加と言ったら、誰もが思い浮かべる「お煎餅」
草加市には多くのお煎餅屋さんがありますが、みんな同じというわけではなく、それぞれ売りにしているポイントが異なるそう。
焼き方にこだわっているところ、干し方にこだわっているところなど、お店によってアピールしている点はさまざま。
そんな中、「丸草一福」のお煎餅は、埼玉県産の鮮度の良いお米を使っているのが特徴です。県内でその年に採れたお米を玄米で仕入れ、冷蔵室にて保管。自社工場内で使用する分だけを精米し、生地作り当日の朝に製粉してお煎餅を作るという徹底したこだわりがあります。
「スーパーで売られている白米に精米日の印字があるように、精米したてのお米の方が、甘味が感じられるんです」と話す高橋さん。
聞くと、すでに粉になっている加工米を仕入れて草加煎餅を作っているお店が多い中、お米を玄米で仕入れ、精米するところからお煎餅を作っているお店は、めずらしいとのこと。元々農家だった先代が「米にこだわるお煎餅屋さんがない」ことから始めたその形を、ひたむきに継承し続けています。
重厚な機械が立ち並ぶ工場内。
精米機や製粉機、お煎餅を焼く機械も全て昔のものをメンテナンスしながら使い続けているそうです。
「たとえば洋菓子であれば、何℃で何分みたいに数値化できるのかもしれないけれど、草加煎餅はそうはいかないんです」と高橋さんは話します。
お煎餅をパタパタとひっくり返しながら焼くその機械は、「草加式」と言われているもの。
たとえ機械で焼いていたとしても、お煎餅を何度も返しながら焼き上げることが草加煎餅の定義とされているため、このような機械を使う必要があります。
「一つ一つレバーで火力を調整できるようになっています。それぞれ膨らみ方や焼き上がりが均一ではないので、仕上がりによって調整できる昔の機械の方が、向いているんです」と話す高橋さん。
現在の基盤で制御された機械に任せるのではなく、職人としての経験や勘という「余白」を大事にし、それを継承していくことに価値があると感じているのかもしれません。
「世の中で大量生産されているお煎餅の多くは、オーブンで流して焼かれているものなんですけど、ひっくり返して焼かなければならない草加煎餅は、その工程で欠けてしまうことが多いんです」
乾燥する冬場になると、ひどい時で1/3ほどのお煎餅が欠けてしまうこともあるそう。高橋さんは、その欠けてしまったお煎餅を割れせんべいとして販売するだけではなく、それに価値をつけられないかと試行錯誤しています。
「タコス生地に入れたり、カレーにトッピングしたり、色々と試しています。最近は、割れせんべいで甘酒やクラフトジン、ビールを作り、販路の幅を広げる準備をしています」
「割れせんべいの活用法は、だいたいマルシェで一緒になった出店者さんに相談しているんです」と話す高橋さん。
いつかお店を持ってみたい個人が出店していることの多い地域のマルシェに、老舗の草加煎餅屋さんが出店するのはかなり珍しいこと。
「草加煎餅屋で、そんなにフットワークが軽いところはないってよく言われます」と、笑顔で話す高橋さん。
確かに、老舗のお煎餅屋さんと聞くと近寄り難いイメージがありますが、笑顔が絶えず物腰の柔らかい高橋さんは、そのイメージを払拭してくれています。
「父の時代、年末の忙しい時期は、徹夜で機械を回してお煎餅を焼いていた時もありました」
幼い頃からお店の手伝いをしていた高橋さんは、時代の変化を肌で感じているようでした。
「余白があるから割れせんべいにフォーカスする理由ができたというのもありますし、逆にそこに目を向けなければいけなくなったという時代背景もあります」
マルシェでは、お客さんだけでなく他の出店者さんともつながり、コラボ商品の提案をするなど積極的に行動している高橋さん。
「やはりマルシェに出ているからだと思うのですが、草加市の個人店や製造業の方からコラボなどの問い合わせが増えていて、今度会うことになっている会社さんもいます」
イベントの多い草加市では、色々なことにチャレンジしたり、変わった取り組みをしている個人や団体・お店が多く存在します。
老舗のお煎餅屋さんでありながら、そこに分け隔てなくフラットな感覚で混ざり合える高橋さんの懐の深さ。
それは、先代と比べて感じている「余白」から生まれてきているのかもしれません。
高橋元一
1988年 埼玉県草加市生まれ。草加煎餅丸草一福 三代目代表取締役。 幼い頃より家業を手伝い経験を積み、2023年、代表取締役に就任。先代から伝わる"お米にこだわるお煎餅"を継承しながら、割れせんべいに新しい価値を与えるための商品を開発中。米麹と割れせんべいで作った甘酒、県別でクラフトジンを作るプロジェクトに割れせんべいを提供。またブルワリーと連携し、割れせんべいを原料に使ったクラフトビールなどを製品化している。
草加煎餅丸草一福公式サイト
編集・取材・文=安保幸子
撮影=若林希
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