収納のスペシャリストがSHIROをチェック〜 整理収納アドバイザーakiさんの空間+想像(クウソウ)探訪 〜
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取材に訪れたのは、名古屋駅から徒歩15分ほどの場所にある複合商業施設「グローバルゲート」。3階と4階、2フロアにわたる植物とインテリアのショップ「garage」の店内へ足を踏み入れると、高層ビルに囲まれた都市の一角にいることを忘れるほど、一瞬にして自然のものたちの世界へと引き込まれます。 まるで話しかけてくるように、笑いかけてくるように、生き生きとした植物たちに囲まれ、心が満たされる瞬間です。 愛知県豊橋市で産声を上げたgarageは、“植物と暮らす”をコンセプトにした、インテリアとの調和や遊び心あふれる空間演出が人気を集め、中部や関東へ続々と新店を展開中。 オーナーの二村昌彦さんが創造する、グリーンとの心地よくておしゃれな暮らし。そこには、植物がもたらしてくれる日々のささやかな発見や驚きがあふれていて、空間、時間、心に、自由な余白を生んでくれます。
目次
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愛知県豊橋市にある種苗会社の次男として生まれ育った二村さん。農作物や花、グリーンなど、暮らしの中で植物が堂々と存在感を放つ環境で育ちました。
「幼い頃は祖母のかたわらで、見よう見まねで挿し木をするなど、植物を育てて楽しんでいました」と話す二村さん。植物は日常にとけ込んだ身近な存在であり、遊び感覚で植物に親しんでいたそうです。
ただ、次男ということもあり、種苗や植物のことを仕事にするという固定概念はなかったという二村さん。中学生、高校生と年代が上がるにつれて、徐々にインテリアへの興味が広がっていきました。
中学生の頃から、自分の部屋の壁をコンクリート調の壁紙に貼り換えたり、雑誌を見ながら模様替えをしたり。当時としてはDIYの先駆けともいうべき、少々、異端児的な男子学生だったようです。
「インテリアショップを巡りたい」という一心で、進学先は東京の大学を選択。雑誌に載っている憧れの雑貨店を網羅することに喜びを感じながら大学時代を過ごした二村さんが、卒業後の進路に選んだ就職先は、ホームセンターでした。
300人もの同期の中で、激しい競争に勝ち抜くために、必死に仕事に打ち込んだという二村さん。「1日3回、会社を辞めたいと思った時期もある」と語るほど追い詰められながらも、園芸や農業部門の担当として実績を残した二村さんは、店長やバイヤーを任されるまでに。“モノを仕入れて売る”という仕組みや、小売業に必要なスキルを着実に身につけていきます。
しかし、常に違和感を抱いていたそう。
「植物って生きもので、それぞれに個性や表情があるでしょ。でもホームセンターにいると、生きているものも生きていないものも、単に商品として扱われている。それが、かわいそうだなって思ったんです」
「この子(植物)の良さを、もっと素敵に魅力的に引き出す、見せ方や演出があるのに…」
そんなジレンマを抱えた二村さんは、自分の店を開くことを夢見て、ホームセンターの会社を退職。単身オランダへ渡ります。
種苗会社の農場で働きながら、施設園芸の先進国として知られるオランダでさまざまな技術や知識を学ぶ二村さん。そこで感じたのは、花や植物に対する文化の違いだったそうです。
「僕が若かった頃って、日本ではまだ男性が花屋さんに行くこと自体、すごく特別なことで敷居が高かった。でもヨーロッパに行ったら“今日は晴れているから、この花を買って帰ろう”とか、“気分がいいから、部屋に植物を飾ろう”とか、日常の習慣として花やグリーンを楽しんでいて。すごく素敵だなって思ったんです」
そしてもう一つ、ヨーロッパの建築やアンティークも二村さんの感性に刺激を与えました。
「ヨーロッパでは、築100年の家は当たり前。手入れをしてリノベーションして、自分の心地よい空間にカスタマイズして生活を楽しんでいる。建築やインテリアなど、オランダで感じた古いものと植物を掛け合わせた住空間の豊かさや、空間をコーディネートする楽しさは、今の店づくりの礎になっています」
1年半にわたるオランダ暮らしを経て、愛知県豊橋市に帰郷した二村さんが手がけたのがgarageでした。
「とにかく僕がカッコいいと思うもの、好きなものを集めた店にしようと思って。今でも使っていますが、オランダから持って帰ってきた、ジャガイモやリンゴの収穫に使う木箱やブリキの箱をディスプレイに取り入れました。僕の趣味部屋みたいなものですね(笑)」
植物についても、開業以来ずっと、二村さん自らヨーロッパやインド、国内なら沖縄や九州などへ赴き、作り手の農家の方と直接顔を会わせて仕入れているというこだわりぶり。
「豊橋の1号店オープンから10年ほど経ち、ようやく認知度が高まり、感度の高い人たちがわざわざ豊橋まで足を運んでくださるようになったと手応えを感じていた頃、名古屋店出店のオファーがありました」
最初は商業施設内での出店に消極的だったそうですが、人と人のつながりや縁を感じたことから、出店を決意。
「制約がある中で、どれだけgarageらしい世界観を演出できるかという不安もあったのですが、やってみると想像以上に楽しくて。“どんな空間でも、日本で一番カッコいい、自分が好きな店をつくるという思いは実現できるんだ”という自信にもなりました」
以来7年の間に、横浜、立川、渋谷など、空間の広さやロケーションに合わせて新しいコンセプトのブランドを打ち出し、瞬く間に9店舗まで拡大しています。
「新しい場所でのオファーをいただくと、その空間を前にして“ここにあの子たち(植物)を置いて、こうやって飾って、隣には園芸用のこの商品を並べて…”と想像しているうちに、めちゃカッコよくなるじゃん!ってワクワクしてきちゃうんです」
植物と好きなアイテムが並ぶ空間を思い浮かべながら、少年のように目を輝かせて、次から次へとアイデアを紡いでいく二村さん。
植物の表情を見て、声に耳を傾け、それぞれの個性が輝くように楽しみながら空間を創造していく。店に入った瞬間、お客が感じるギャップやサプライズ感も大切にしているというその遊び心は、スタッフの中にも浸透しています。
「いろいろな店舗を回っていると、“あれ、こんなの置いてあったっけ?”ということが、よくあるんです。スタッフにも“自分がカッコいいと思ったもの、良いと思ったことはまず取り入れてチャレンジしてみよう”って言っているので、みんな楽しみながら、それぞれの店づくりをしてくれているんだと思います」
「原点は、自分の好きなこと、趣味を仕事にしたいという思いを貫いているだけなんです」と語る二村さん。植物の個性もスタッフの感性も受け入れ、いろいろなセッションを楽しみながら空間を創造する。その懐の深さこそが、二村さんの独創的な世界観を生み、訪れる人を魅了している理由なのかもしれません。
幼い頃から、いつも身近にあり、遊びの一部だった植物たちとの日常。今、奥様と3人のお子さまとの拠点としている豊橋の自宅は、植物たちの営みを肌で感じられる“庭が主役の家”だとか。
「庭の草木の表情や四季折々の変化に目を配りながら、庭で駆けまわる子どもたちの様子を眺めるのが楽しみ」と話す二村さん。主役の庭では、BBQやサウナを楽しめる設備も備えています。
「プレイベートと仕事の境界線がないんです。自分が心から素敵だなと思ったものしか、人にはおすすめできないでしょ?だからまずは自分が体験してみる。真面目に遊んでみる。仕事と遊びのボーダーがないラフさが、僕にとっての余白かな」
グリーンがある暮らしの魅力について、二村さんに改めてたずねてみました。
「インテリアや雑貨ももちろん好きだけど、人工物だけを美しくレイアウトしても、どこか単調というか無機質でしょ。でもそこに植物が入ることで、一気に躍動感が生まれる。動きとか光とか風とかを感じられるようになる。
葉を見ながら“今日、すごくきれいだな”って感じたり、芽吹いた日はすごく嬉しくなって元気をもらえたり。どんなに忙しない日々でも、植物にふと目を遣ることで、時間や思考を一旦停止してリセットできると思うんです」
植物の表情を見て、対話するように水やりをする。庭の木々を眺めながら、季節の移ろいを感じる。植物のある慈しみ深いそのワンシーンは、日々の慌ただしい時間軸に、ちょっとした変化をもたらし、心に余白を生んでくれるのです。
二村昌彦(株式会社ガレージ代表)
1973年愛知県豊橋市生まれ。幼い頃から起業志向があり、大学卒業後に就職したホームセンターで、商品の仕入れから販売までのノウハウを習得。その後、施設園芸の先進国であるオランダへ。1年半の滞在中、日本とは異なるヨーロッパの人たちの植物との接し方、暮らし方を体感して大いに刺激を受け、日本へ帰国。2007年愛知県豊橋市に植物とインテリア雑貨の店「garage」をオープン。現在はgarageをはじめ、Rust、noniなどのブランドを展開し、愛知、東京、神奈川に合わせて9 店舗を構える。
garage[ガレージ]公式サイト
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「garage」のお店へうかがうと、いつもスタッフの方々が愛おしそうに植物に目を配っていたり、質問を投げかけると目をきらきらさせて丁寧にアドバイスをくれたりして「本当に植物のことが好きなんだな」と常々感じていました。
その根底にあるのは、「自分たちが素敵だと思うこと、楽しいと思うことしかおすすめしない」という「garage」に息づく思いだったのだと感じました。
二村さんに、今後の夢をうかがうと「豊橋、鎌倉化計画です」と語ってくださいました。
海があり、自然豊かで、野菜もおいしい愛知県の豊橋市。実はサーフィンのメッカとして遠方から来訪する人も多い場所です。「garageを旅の目的地として、おしゃれ感度の高い人が集まってくれれば、カッコいい飲食店が増えて、地元素材を使った特色のあるお店も増えて、町のカルチャー水準が上がると思うんです」と熱く夢を語る二村さん。
仕事と趣味の境界線なく、自分たちが思う“好き”や“カッコいい”を目一杯表現し、楽しみながらチャレンジする二村さんの世界観には、暮らしや人生の余白を楽しむヒントがいっぱい詰まっていました。
編集・取材・文=花野静恵
撮影=北川友美
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