
鉄骨の戸建ては高いだけ?6つの比較ポイントで木造との違いを解説
「マイホームを建てるなら地震に強い鉄骨の戸建てがいいかも。でも、木造より高いって聞くし、本当にその価値があるのかな?」と悩んでいませんか。 なんとなくのイメージで「高いから」と安易に決めてしまうと、数年後に「鉄骨ならもっと理想の間取りにできたのに…」と後悔するかもしれません。 実は、鉄骨と木造のどちらを選ぶべきかは、コストや耐震性など6つの重要なポイントで比較すれば、あなたにとっての正解がはっきりと見えてきます。 この記事では、専門用語をできるだけ使わずに、鉄骨と木造の戸建てを6つのポイントで徹底比較します。 後悔しない家づくりのために、まずは両者の違いを正しく理解することから始めましょう。
目次
この記事のポイント
- 鉄骨造と木造の基本的な違いがわかる
- コストや寿命など6つの重要項目で両者を徹底比較できる
- 家を建てた後に後悔しないためのメリット・デメリットを学べる
- 将来のメンテナンスやリフォーム費用まで見通せる
鉄骨の戸建てとは?木造との違いや基本をわかりやすく解説
「鉄骨の家」と聞いても、具体的にどんな家か想像しにくいですよね。
ここでは鉄骨の戸建ての基本から構造の種類まで、分かりやすく解説します。
- そもそも鉄骨造の家ってどんな家?
- 「軽量鉄骨」と「重量鉄骨」の違いとは?戸建てはどっち?
まずは家づくりの基本をしっかり押さえましょう。
そもそも鉄骨造の家ってどんな家?
鉄骨造の家とは、その名の通り、家の最も重要な骨組み(柱や梁)に鉄骨(スチール)を使った住宅のことです。
アルファベットでは「S造」や「Steel造」と表記されます。これは、木の骨組みでできた「木造(Wood=W造)」と区別するための呼び方です。
鉄骨造の大きな特徴は、多くのハウスメーカーで「プレハブ工法」が採用されている点です。
これは、あらかじめ工場で精密に作られた柱や梁、壁などの部材を、現場でクレーンなどを使って組み立てていく方法です。
職人の技術力によって品質に差が出やすい木造住宅と比べて、工場生産のため品質が安定しやすいというメリットがあります。
地震に強いというイメージがありますが、それは鉄が持つ「しなやかさ」と「粘り強さ」によるものです。
地震の揺れを硬い力で受け止めるというよりは、しなやかに吸収して建物全体の倒壊を防ぐという特徴を持っています。
「軽量鉄骨」と「重量鉄骨」の違いとは?戸建てはどっち?
一口に鉄骨造といっても、実は使われる鋼材の「厚み」によって2つの種類に分けられます。それが「軽量鉄骨造」と「重量鉄骨造」です。
この2種類の違いを、以下の表で比較してみましょう。
項目 | 軽量鉄骨造 | 重量鉄骨造 |
鋼材の厚さ | 6mm未満 | 6mm以上 |
主な用途 | 一般的な戸建て住宅、アパートなど(2〜3階建て) | マンション、ビル、3階建て以上の住宅など |
コスト | 重量鉄骨よりは安い | 軽量鉄骨より高い |
設計の自由度 | 重量鉄骨よりは制限がある | 柱が少なくても建てられるため、非常に高い |
工法 | 主にハウスメーカーのプレハブ工法 | ラーメン構造など |
表の通り、一般的な戸建て住宅で「鉄骨の家」という場合、そのほとんどは「軽量鉄骨造」を指します。
重量鉄骨造は頑丈で柱が少なく済むため、店舗併用住宅や大空間リビング、ビルトインガレージなど、特別なこだわりを実現したい場合に採用されます。
家づくりのプランを考える上で、まずはこの違いを知っておくと良いでしょう。
鉄骨の戸建てを建てるメリットは?耐震性や間取りの自由度が魅力
鉄骨の戸建てを選ぶ決め手となる、具体的なメリットが気になりますよね。
ここでは、鉄骨の戸建てが持つ代表的な4つのメリットを詳しく解説します。
- 地震の揺れに強い高い「耐震性」
- 広いリビングや大きな窓も実現できる「間取りの自由度」
- 工場生産によるブレのない「安定した品質」
- 主要構造部が劣化しにくい「耐久性」と「シロアリ対策」
一つずつ詳しく見ていきましょう。
地震の揺れに強い高い「耐震性」
鉄骨の戸建てを選ぶ最大のメリットは、地震に対する強さです。
鉄という素材は、木材に比べて「靭性(じんせい)」、つまり粘り強さに優れています。
地震で大きな力が加わった際、硬いだけの素材は折れたり割れたりしやすいですが、粘り強い鉄は変形することでエネルギーを吸収し、建物の倒壊を防ぎます。
揺れが収まれば元に戻ろうとする性質もあり、繰り返す余震にも強いのが特徴です。
木造が筋交いや壁で揺れに「耐える」のに対し、鉄骨は構造体全体で柔軟に「いなす(受け流す)」と捉えると分かりやすいでしょう。
この安心感が、地震の多い日本で鉄骨住宅が選ばれる大きな理由です。
広いリビングや大きな窓も実現できる「間取りの自由度」
「柱のない広々としたリビングが欲しい」「壁一面を窓にして開放感が欲しい」といった理想はありませんか?
鉄骨造は、こうした間取りの自由度が高いことも大きな魅力です。
鉄は木よりも強度が高いため、少ない柱や壁で建物をしっかりと支えることができます。
そのため、木造では構造上難しくなることがある以下のような設計も実現しやすくなります。
- 大空間(大スパン):LDKを合わせて30畳以上といった、途中に柱や壁のない広々とした空間。
- 大開口:壁一面の大きな窓や、複数台を止められるビルトインガレージの広い開口部。
- 吹き抜け:リビングの天井を高くして、縦の広がりを感じさせる開放的な空間。
こうした設計の自由度の高さは、モダンでスタイリッシュなデザインを好む方にとって、特に大きなメリットとなるでしょう。
工場生産によるブレのない「安定した品質」
マイホームは一生に一度の大きな買い物だからこそ、品質に差が出ることがあります。
その点、鉄骨住宅はJIS(日本産業規格)で認定された均質な部材を使用するため、どの家でも設計通りの強度を確保しやすいのです。
天候に左右されにくい現場作業も、安定した品質につながる要因の一つです。
主要構造部が劣化しにくい「耐久性」と「シロアリ対策」
主要な骨組みが鉄でできているため、木造住宅のように湿気による腐食やシロアリの被害を受ける心配がほとんどない点も、鉄骨住宅の大きなメリットです。
木材は時間とともに乾燥による収縮や変形が起こることがありますが、鉄骨は経年による材質の変化が極めて少ない素材です。
そのため、長期間にわたって安定した性能を維持しやすく、高い耐久性を誇ります。
もちろん、全く木材を使わないわけではないため、内装材などがシロアリの被害に遭う可能性はゼロではありません。
しかし、家の構造そのものが食べられてしまうリスクがないことは、長く安心して暮らす上で非常に心強いポイントと言えるでしょう。
知っておくべき鉄骨の戸建てのデメリットと後悔しないための対策
メリットだけでなく、デメリットも正しく知っておきたいですよね。
ここでは鉄骨の戸建てを建てる前に知っておくべき4つのデメリットと、その対策を解説します。
- 木造より高くなる傾向にある「建築コスト」
- 対策しないと夏暑く冬寒い?「断熱性」の課題
- 将来的に発生する「サビ」のリスク
- 意外に気になる「音」の問題
後悔しないために、しっかりと確認していきましょう。
木造より高くなる傾向にある「建築コスト」
鉄骨の戸建てを検討する上で、多くの方が最初に直面する課題が建築コストです。
一般的に、同じ規模の家を建てる場合、木造住宅よりも鉄骨住宅の方が高くなる傾向にあります。
主な理由は2つあります。1つは、材料費そのものが木材よりも高いこと。
もう1つは、建物全体の重量が重くなるため、建物を支えるための基礎工事がより頑丈なものになり、費用がかさむためです。
場合によっては、土地の地盤を強化する「地盤改良工事」が必要になることもあります。
【対策】
このコスト差をどう捉えるかが重要です。
初期費用は高くても、耐震性の高さやシロアリ対策不要など、長期的な安心感やメンテナンスコストも考慮し、総合的に判断しましょう。
対策しないと夏暑く冬寒い?「断熱性」の課題
「鉄骨の家は夏暑くて冬寒い」と聞いたことはありませんか?
これは鉄が木より熱を伝えやすいため、外の暑さや寒さが骨組みを通じて室内に伝わる「ヒートブリッジ」現象が起こりやすいためです。
この現象により断熱対策が不十分だと、冷暖房の効率が悪くなり、光熱費が上がってしまう可能性があります。
【対策】
この課題を克服するため、現在のハウスメーカーは断熱技術に非常に力を入れています。
家全体を高性能な断熱材で魔法瓶のように覆う「外張り断熱」を採用したり、壁の中に隙間なく断熱材を充填したりと、様々な工夫が凝らされています。
鉄骨住宅を検討する際は、どのような断熱材や工法が採用されているかを必ず確認しましょう。
将来的に発生する「サビ」のリスク
鉄の最大の敵は「サビ」です。
家の骨組みである鉄骨は、もちろん防錆(ぼうせい)処理が施されていますが、それが永久に効果を発揮するわけではありません。
特に注意したいのが、外壁のひび割れなどから雨水が壁の内部に侵入し、鉄骨が濡れてしまうケースです。
骨組みが錆びてしまうと、建物の強度が低下する原因になりかねません。
【対策】
鉄骨をサビから守るために最も重要なのは、定期的な外壁のメンテナンスです。
一般的に10年~15年に一度、外壁の再塗装を行うことで防水性能を保ち、雨水の侵入を防げます。
これは建物の寿命を延ばすために不可欠な投資と考えましょう。
意外に気になる「音」の問題
鉄は木よりも音を伝えやすいため、生活音が響きやすいという側面があります。
特に軽量鉄骨造の2階建て住宅などでは、2階の足音や物を落とす音が、鉄骨を伝って1階に響くことがあります。
また、雨が屋根や外壁に当たる音も、木造住宅より大きく感じられる場合があります。
【対策】
この問題についても、ハウスメーカーは床に防音材や制振材を入れるなどの対策をしています。
設計段階で、どのような防音対策が施されているかを確認することが大切です。
また、寝室や書斎など、特に静かに過ごしたい部屋の配置を工夫したり、厚手のカーペットを敷いたりすることでも音を和らげることができます。
【徹底比較】鉄骨vs木造!コストや寿命、どっちを選ぶべき?
結局、我が家に本当に合うのはどちらなのか、気になりますよね。
ここでは家づくりで最も重要な6つの項目で鉄骨と木造を徹底的に比較し、解説します。
- 建築コスト・坪単価
- 耐震性
- 間取りの自由度
- 断熱性・気密性
- 法定耐用年数と実際の寿命
- 固定資産税
ご自身の優先順位はどこにあるか、確認しながら読み進めてみてください。
比較のポイント早見表
まずは、これから解説する内容を一覧表にまとめました。全体像を把握するのにご活用ください。
比較項目 | 鉄骨造 | 木造 | どちらかというと… |
建築コスト | 高い傾向 | 比較的抑えやすい | コストを重視するなら木造 |
耐震性 | 「しなやかさ」で揺れを吸収 | 「硬さ」で揺れに耐える | どちらも安全だが特性が異なる |
間取り自由度 | ◎ 非常に高い | ◯ 高い(鉄骨よりは制限あり) | 開放的な大空間を求めるなら鉄骨造 |
断熱性 | △ 対策が必須 | ◯ 構造的に有利 | 夏涼しく冬暖かい家なら木造 |
法定耐用年数 | 27年(軽量鉄骨) | 22年 | 税法上の資産価値は鉄骨造が長い |
固定資産税 | 高い傾向 | 比較的安い | 税金の負担を抑えたいなら木造 |
建築コスト・坪単価
前述の通り、一般的に建築コストは木造の方が抑えやすい傾向にあります。
坪単価の目安としては、木造が70万円~なのに対し、軽量鉄骨造は80万円~が一つの基準となります。
もちろん、依頼するハウスメーカーや設備のグレードによって大きく変動します。
ただし、初期費用をできるだけ抑えたい場合は木造に軍配が上がることが多いでしょう。
耐震性
現在の日本の建築基準法は非常に厳しく、正しく設計・施工されていれば、鉄骨造も木造も同等の高い耐震性を備えています。
ただし、揺れに対するアプローチが異なります。
鉄骨造は粘り強い「しなやかさ」で地震のエネルギーを吸収し、木造は多くの柱や壁で構成される「硬さ」で揺れに耐えます。
どちらが優れているというわけではなく、構造の特性の違いと理解しておきましょう。
間取りの自由度
広い空間づくりや大きな窓の設置といった間取りの自由度は、鉄骨造の方が有利です。
強度が高い鉄骨は、木造よりも少ない柱で建物を支えられます。
そのため、柱や壁に邪魔されない開放的なLDKや、スタイリッシュな吹き抜けなどを設計しやすくなります。
断熱性・気密性
家の快適さを左右する断熱性・気密性は、構造的に木造の方が有利と言えます。
木そのものが断熱性に優れた素材であるのに対し、鉄は熱を伝えやすいため、鉄骨造で高い断熱性を確保するには相応の断熱対策が必須となります。
もちろん、最近の鉄骨住宅は高性能な断熱材でその弱点をカバーしていますが、構造自体の特性としては木造に分があります。
法定耐用年数と実際の寿命
法定耐用年数とは、税法上で定められた「その資産を使える期間」のことで、建物の寿命そのものではありません。
この年数で見ると、木造が22年であるのに対し、軽量鉄骨造(骨格材の厚み3mm超4mm以下の場合)は27年と、鉄骨造の方が長くなっています。
しかし、実際の家の寿命はメンテナンス次第で大きく変わります。
定期的なメンテナンスを怠れば鉄骨造でも20年で劣化しますし、きちんと手入れをすれば木造でも50年以上快適に暮らすことができます。
「法定耐用年数が長い=長持ちする家」と安易に考えないように注意しましょう。
固定資産税
毎年支払う固定資産税は、鉄骨造の方が木造よりも高くなる傾向にあります。
これは、前述の「法定耐用年数」が関係しています。
固定資産税は、建物の資産価値に応じて算出されます。
一方、法定耐用年数が長い鉄骨造は、木造に比べて資産価値が下がりにくい(減価償却が遅い)と評価されます。
そのため、課税額がなかなか下がらず、結果的に木造よりも税金の負担が大きくなりやすいのです。
鉄骨戸建ての寿命は?メンテナンス・リフォーム・解体費用を解説
家は建てて終わりではなく、建てた後のことも考えておきたいですよね。
ここでは家の寿命を左右するメンテナンスや、将来のリフォーム、解体費用まで解説します。
- 法定耐用年数はあくまで目安!実際の寿命はメンテナンス次第
- 長く住むためのメンテナンス計画と費用
- 鉄骨戸建てのリフォームで出来ること・注意点
- 将来的な解体費用の目安は?
長く快適に住むための知識を身につけましょう。
法定耐用年数はあくまで目安!実際の寿命はメンテナンス次第
比較の章でも触れましたが、「法定耐用年数=家の寿命」ではありません。
税法上の価値を示す数字であり、実際の家の寿命は「物理的耐用年数」と呼ばれ、全く別のものです。
鉄骨住宅の物理的耐用年数は、一般的に30年~60年、あるいはそれ以上とも言われています。
この大きな幅は何によって決まるのかというと、それは「メンテナンスを適切に行っているかどうか」に尽きます。
逆に言えば、どんなに頑丈な鉄骨の家でも、メンテナンスを怠ると雨漏りで骨組みが錆びてしまいます。
その結果、30年も経たずに大規模な修繕が必要になることもあり得ます。
家は建てた後も、愛情をかけて手入れをしていくことが何よりも大切なのです。
長く住むためのメンテナンス計画と費用
鉄骨住宅の寿命を延ばすために最も重要なメンテナンスは、骨組みを雨水から守り、サビを防ぐことです。
そのために、特に以下のメンテナンスは計画的に行う必要があります。
メンテナンス項目 | 時期の目安 | 費用の目安 | 内容 |
外壁塗装 | 10年~15年ごと | 100~150万円 | 外壁を再塗装し、防水性能を回復させる。 |
屋根の防水工事 | 10年~20年ごと | 50~200万円 | 屋根材の補修や葺き替え、防水処理を行う。 |
シーリングの打ち替え | 10年~15年ごと | 20~40万円 | 外壁材の隙間を埋めるゴム状の素材を交換する。 |
これらの費用は決して安くはありませんが、家の資産価値と安全性を維持するためには不可欠です。
家を建てると同時に、将来のメンテナンス費用として計画的に貯蓄を始めることを強くおすすめします。
鉄骨戸建てのリフォームで出来ること・注意点
鉄骨住宅は、将来のライフスタイルの変化に対応しやすいという隠れたメリットがあります。
【出来ること】
丈夫な骨組みで家を支えているため、間取りの変更がしやすいのが大きな特徴です。
この構造は、大規模なリフォーム(リノベーション)にも対応しやすい特長があります。
例えば、「子どもが独立したので、2つの部屋を繋げて広い趣味の部屋にしたい」といったご要望にも柔軟に応えられます。
【注意点】
ただし、注意点もあります。一つは、耐震性を確保するための「ブレース」と呼ばれる筋交いが入った壁は、構造上取り払えない点です。
また、ハウスメーカー独自の工法で建てられている場合、リフォームはそのメーカーか関連会社にしか依頼できないケースもあります。
将来のリフォームの可能性も考えて、設計の自由度や依頼先の選択肢について事前に確認しておくと安心です。
将来的な解体費用の目安は?
いつか家を建て替える、または更地にする時が来た場合、家を解体する費用がかかります。
この解体費用は、木造住宅に比べて鉄骨住宅の方が高くなるのが一般的です。
理由は、頑丈な構造のため解体に手間がかかること、基礎が強固であること、鉄骨という産業廃棄物の処分費用がかかることなどが挙げられます。
費用の目安は、木造が坪あたり3~5万円なのに対し、軽量鉄骨造では坪あたり4~6万円ほどです。
30坪の家であれば、木造が90~150万円、鉄骨造が120~180万円となり、数十万円の差が出ることになります。
これも家の生涯コスト(ライフサイクルコスト)の一つとして、頭の片隅に入れておくと良いでしょう。
【FAQ】鉄骨の戸建てに関するよくある質問
最後に、鉄骨の戸建てに関してよく寄せられる質問とその答えをまとめました。
家づくりを進める上での最後の疑問や不安をここで解消しておきましょう。
Q1. 鉄骨の家はWi-Fiの電波が繋がりにくいって本当?
A. はい、その可能性はあります。対策を考えておくことをおすすめします。
Wi-Fiなどの電波は、金属を通り抜けにくい性質があります。
そのため、家の骨組みである鉄骨や、壁に使われる建材によっては、木造住宅に比べて家の中でWi-Fiが繋がりにくい場所ができてしまうことがあります。
【対策】
最近では、複数のアクセスポイントを設置して家全体を網羅する「メッシュWi-Fi」という便利な機器があります。
また、設計段階で、パソコンやテレビを置く場所にあらかじめ有線LANの配線をしておくと、通信が安定するのでおすすめです。
Q2. 火事には強いの?弱いの?
A.「燃えにくい」ですが、「熱には弱い」という特性があります。
鉄骨そのものは、木材と違って燃えることがない不燃材料です。
そのため、火事の燃え広がりを防ぐ効果が高く、火災保険料が木造より安くなるメリットがあります。
しかし、鉄は約550℃の高温に達すると強度が急激に低下し、ぐにゃりと曲がってしまうという弱点も持っています。
そのため、現在の鉄骨住宅では、火災の熱から骨組みを守るために、石膏ボードなどの耐火被覆で鉄骨を覆うことが法律で義務付けられています。
この対策により、万が一の火災時にも、住民が安全に避難する時間を十分に確保できるようになっています。
Q3. 鉄骨の家は日本特有なの?海外の住宅事情との違い
A. 大手ハウスメーカーが作る規格化された「戸建て住宅」としては、日本で特に発展した文化と言えます。
海外でも、ビルやマンションなど大規模な建物では鉄骨造が一般的です。
しかし、個人が建てる戸建て住宅においては、アメリカやヨーロッパでは今でも木造(ツーバイフォー工法など)が圧倒的な主流です。
地震の多い戦後日本では、安定品質の住宅を大量供給する必要がありました。
こうした背景から、大手ハウスメーカーが工場生産の鉄骨住宅システムを開発・普及させました。
これは、世界的に見ても少し特殊な住宅事情と言えるかもしれません。
Q4. 結局、自分には鉄骨と木造どっちが向いている?
A. あなたの「優先順位」によって決まります。
ここまで解説してきた通り、鉄骨造と木造にはそれぞれに優れた点と注意すべき点があり、どちらか一方が絶対的に優れているわけではありません。
【鉄骨造がおすすめな人】
- デザイン性:柱のない大空間リビングや、壁一面の大きな窓など、開放的でモダンな間取りを実現したい人
- 品質の安定性:工場生産による均質な品質と、大手ハウスメーカーのブランド力や長期保証に安心感を求める人
- 防災意識:何よりもまず、地震に対する構造の強さを最優先したい人
【木造がおすすめな人】
- コスト:建築時の初期費用をできるだけ抑えたい人
- 快適性:木のぬくもりや香り、優れた断熱性や調湿性など、日本の気候に合った心地よさを重視する人
- 自由度:地元の工務店など、依頼先の選択肢を広く持ち、より自由な設計をしたい人
この記事の6つの比較ポイントを参考に、家族で『家づくりで何を大切にしたいか』を話し合うことが、後悔しない選択への一番の近道です。
まとめ
鉄骨の戸建ては、「高いだけ」では決してありません。優れた耐震性や設計の自由度といった、木造にはない多くの魅力を持っています。
その一方で、コストや断熱性といった、建てる前に必ず知っておくべき注意点も存在します。
大切なのは、両者の違いを正しく理解し、ご自身の価値観やライフプランに合った構造を選ぶことです。
この記事が、あなたの理想のマイホームづくりを実現するための一助となれば幸いです。

蓑輪 達也
二級建築士|ハウスドゥ・ジャパン 売買建設企画部 西日本グループ グループ長 ハウスドゥ・ジャパンに新卒入社。施工管理職を経験後、現在は建築設計職を軸に施工管理・ビルディングマネジメントと活躍の場を多方面に広げています。 建築設計では、戸建てからホテル建築まで幅広くプロジェクトに携わっています。
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