4,000万円の家を買える人の年収と無理なく返済する6つのポイントを解説
マイホームの資金計画を考えるときに、住宅ローンの借入金額は無理なく返済していける金額であることが必要です。 そのなかで「4,000万円の家を買うのに必要な年収はどれくらいなのだろうか」と疑問を持たれる方もいるでしょう。 そこでこの記事では、収入に占める住宅ローン返済の割合である「返済負担率」や住宅金融支援機構の「年収倍率」をもとに、4,000万円の家購入に必要な年収を紹介します。 さらに、4,000万円の家を無理なく購入するためのポイントや夫婦2人の収入で購入する方法についても紹介しますので、ぜひ最後までご一読ください。
目次
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4,000万円の家を買える人の年収は496万~620万円以上
ここでは「年収倍率」と「返済負担率」という2つの指標から4,000万円の家を買える人の年収を試算してみました。
年収倍率からみた4,000万円の家を買える人の年収
年収倍率とは、住宅の取得資金が年収の何倍になっているかを示すものです。
住宅金融支援機構のフラット35利用者調査によると、物件種別ごとの年収倍率は次のようになっています。
物件種別 | 年収倍率 |
土地付き注文住宅 | 7.7倍 |
注文住宅 | 7.0倍 |
マンション | 7.2倍 |
建売住宅 | 6.6倍 |
中古マンション | 5.6倍 |
中古戸建て | 5.3倍 |
出典:住宅金融支援機構「2023年度フラット35利用者調査」
購入物件によって年収倍率は異なりますが、新築住宅は6.6~7.7倍となっている一方、中古住宅は5.3~5.6倍となっており、新築住宅購入者の年収倍率が高い傾向です。
なお、この調査における年収倍率は、住宅取得資金に関するものです。
つまり、注文住宅であれば土地取得費と建築費用の合計、分譲住宅や中古住宅であれば物件取得費用が年収の何倍になっているかを表す指標です。
そのため、資金計画上一定の自己資金を準備していることを考慮すると、住宅ローン借入金額に対する年収倍率はもう少し低く、最大で7倍程度と考えられます。
これをもとに4,000万円の住宅ローンを組むための必要年収を計算すると、570万円程度(4,000万円÷7倍)が目安となります。
ただし、年収倍率では金利水準や返済期間などは考慮されていません。参考程度に考えておきましょう。
返済負担率からみた4,000万円の家を買える人の年収
次に、返済負担率から4,000万円の家を買える人の年収を試算してみましょう。
返済負担率とは、年収に対して1年間の返済額が占める割合です。返済比率ともいいます。
例えば、年収600万円の方が1年間の返済額が120万円(10万円/月)の住宅ローンを組んだ場合、返済負担率は20%(120万円÷600万円×100)となります。
このとき住宅ローン以外に借り入れ(車のローンなど)がある場合は、それを含めて計算する必要がある点に注意が必要です。
一般的に、無理のない返済負担率は20~25%までと言われています。20%までに抑えられれば理想的といえるでしょう。
そこで、4,000万円の住宅ローンに対して、返済負担率を25%以内に抑える場合と20%以内に抑える場合に必要となる年収について試算してみます。
前提として、変動金利を想定した住宅ローン金利を年0.50%、全期間固定金利を想定した金利を年1.80%として試算します。
4,000万円の住宅ローンを借りたときの毎月の返済額と年間返済額は次のとおりです。
金利タイプ(適用金利) | 毎月の返済額 | 1年間の返済額 |
変動金利:年0.50% | 103,834円 | 約124万円 |
全期間固定金利:年1.80% | 128,436円 | 約154万円 |
※借入期間35年・元利均等返済・ボーナス返済なし
4,000万円を借り入れした場合の年間返済額は、およそ124万~154万円です。
ここから返済負担率を25%以内と20%以内に抑えるために必要な年収を計算すると次のようになります。
返済負担率 | 必要な年収(目安) |
25%以内 | 496万~616万円以上 |
20%以内 | 620万~770万円以上 |
返済負担率を何%までに抑えるか、また利用する住宅ローンの金利水準によって変わりますが、4,000万円の住宅ローンを組むうえで必要な年収の目安は496万~620万円以上となります。
返済負担率を低く抑えるほどまた利用する住宅ローンの金利が高いほど、必要な年収は高くなります。
なお、変動金利は全期間固定金利より金利水準が低い分必要年収は少なくなりますが、金利上昇の可能性がある点に注意が必要です。
金融機関から借りられる金額と返済可能額は異なる
住宅ローンの借入金額を考えるとき、金融機関から借りられる金額(借入可能額)と無理なく返済できる金額(返済可能額)は異なる点に注意しなければなりません。
金融機関から借りられる借入可能額は、金融機関が設ける審査金利や返済負担率(上限)によって決まる金額であり、必ずしも無理なく返済できる金額とは限りません。
例えば、メガバンクと住宅金融支援機構のフラット35では、審査金利も返済負担率も異なるため、同じ年収であっても借りられる金額に違いが出ます。
年収600万円での借入可能額を試算すると、以下のようになります。
メガバンク※1 | フラット35※2 | |
借入可能額(目安) | 4,234万円 | 5,433万円 |
※1 審査金利3.5% 返済比率35%以下(年収400万円以上)で試算
※2 審査金利1.82%(2024年10月金利) 返済比率35%以下(年収400万円以上)で試算
メガバンクとフラット35では、借入可能額は1,000万円以上の差があることがわかります。
利用する住宅ローン商品によっては4,000万円以上の借り入れができる可能性もありますが、無理のない借入金額となっているかを確認することが大切です。
4,000万円の住宅ローンで後悔したくない…無理なく返済する6つのポイント
ここでは4,000万円の住宅ローンを無理なく返済するポイントについて解説します。
- 返済期間を短くし過ぎない
- 金利上昇した場合の家計への影響をシミュレーションする
- できるだけ頭金・自己資金を増やす
- 低金利の住宅ローンを利用する
- 長期の視点で返済計画を考える
- 国や自治体の補助金を有効活用する
返済期間を短くし過ぎない
住宅ローンの契約時に借入期間を短くし過ぎないことが大切です。
確かに、返済期間を短くするほうが利息負担が減り返済総額が少なくなり、完済時期を早められるメリットはあります。
ただし、返済期間を短くすると毎月の返済額は増えるため、返済の負担が重くなり過ぎないよう注意することが必要です。
また、返済期間が短い分、年間の返済額は増え返済負担率が上がるため、審査内容によっては借入金額に影響する可能性もります。
そのため、初めから返済期間を短くし過ぎず、余裕があれば繰り上げ返済することがおすすめです。期間短縮型の繰り上げ返済を行えば、最終的に返済期間を短縮できます。
長期間の返済を前提とする住宅ローンでは、住宅ローンの負担感が重すぎると必要な貯蓄ができない、あるいは必要以上のガ我慢を強いられるなど、ライフスタイルそのものに影響する可能性があるため注意しましょう。
金利上昇した場合の家計への影響をシミュレーションする
変動金利タイプの住宅ローンを利用する場合は、金利が上昇したときのシミュレーションをしておくといいでしょう。
4,000万円の住宅ローンで借り入れから10年後に金利上昇した場合の毎月の返済額は、以下のようになります。
当初の返済額 | 金利上昇後の返済額 | 返済額の上昇 | |
年1.0%金利上昇 | 103,834円/月 | 117,086円/月 | +13,252円/月 |
年1.5%金利上昇 | 103,834円/月 | 124,088円/月 | +20,254円/月 |
※前提条件:当初金利年0.5%・返済期間35年・元利均等返済
借入金額が4,000万円の場合、借り入れから10年後に1.0%の金利上昇で毎月の返済額はおよそ13,000円増え、1.5%の金利上昇だとおよそ20,000円、毎月の返済額が増えます。
借り入れから10年経つと、子どもの成長に伴い家計支出が増えていることもあるでしょう。そのため、金利上昇によって家計への影響はどの程度か、無理なく返済を継続できるかなどを検討しておくことが大切です。
なお、多くの変動金利タイプの商品には、「5年ルール」「125%ルール」が設けられています。
- 5年ルール:金利が上昇しても5年間は返済額が変わらない
- 125%ルール:当初の返済額から125%を超えて毎月返済額が増えない
ただし、これらは急に返済額が上昇することで返済が困難となることを防ぐための制度です。利息負担は金利上昇によって増えている点には注意してください。
できるだけ頭金・自己資金を増やす
できるだけ頭金や自己資金を増やすことで返済計画を立てやすくなります。
自己資金が多いほど借入金額を抑えられるため、家計に対する住宅ローン返済負担を抑えることが可能です。
また、自己資金を増やすほど融資率を抑えられるため審査に通りやすくなります
融資率とは、物件価格に対して住宅ローン借入金額が占める割合です。
住宅ローン審査における審査項目の1つであり、フラット35のように融資率によって適用金利が変わる住宅ローン商品もあります。
もし自己資金が少なく4,000万円の住宅ローンを組むことが難しければ、親からの資金援助なども含めて検討してみましょう。
どうしても資金計画上難しい場合、一定期間貯蓄してから購入することも検討する必要があります。
ただし、住宅購入を先送りにすると住宅ローン返済の代わりに家賃を支払う期間が長くなります。
また、年齢にもよりますが購入時期が遅れる分、住宅ローン完済時期が遅くなる可能性もあり、できるだけ早く購入したほうがメリットは大きいといえるでしょう。
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金利の低い住宅ローンを選ぶ
できるだけ多くの選択肢から金利の低い住宅ローンを選ぶことが大切です。
金利タイプには、変動金利や全期間固定金利、固定期間選択型があり、金利タイプによって金利が低い金融機関は変わります。
住宅購入時には、住宅会社や不動産会社から提携ローンをすすめられることもありますが、それだけで判断せず多くの選択肢から検討することが大切です。
なお、特に現在低金利の状況にある変動金利タイプの場合、候補となる住宅ローン商品にそれほど金利差がない場合もあるでしょう。
その場合は、金利水準だけでなく団体信用生命保険の特約(がん団信や3大疾病付き団信など)の上乗せ金利や保障内容も含めて住宅ローンを決めることがおすすめします。
長期の視点で返済計画を考える
住宅ローンは長期の返済を前提としますので、返済期間中の家計の変化や貯蓄なども踏まえ返済計画を考えることが大切です。
マイホーム購入後に子どもの数が増えたり、子どもの成長にともなって教育費の支出が増えるなど家計の収支は変わります。
また、将来の老後資金のための貯蓄や家のメンテナンス費用の積み立ても必要です。長期の視点で家計の支出を踏まえ返済計画を考えましょう。
国や自治体の補助金を有効活用する
マイホーム購入において、国や自治体が行うさまざまな補助事業や優遇税制を有効活用することが大切です。
下表は、新築住宅の新築・購入について、国の補助金や優遇税制の概要をまとめたものです。詳細な要件や補助内容などは各事業の公式サイトで確認してください。
●国・自治体の補助金・助成金
子育てエコホーム支援事業 | |
補助対象 | 省エネ性能が高い新築住宅の新築・取得する子育て世帯・若者夫婦世帯 |
補助・助成金額 | ・長期優良住宅:100万円/戸 ・ZEH水準住宅:80万円/戸 |
ZEH補助金(ネット・ゼロ・ハウス) | |
補助対象 | 年間の一次エネルギー消費量が実質ゼロになることを目指した住宅(ZEH)もしくはさらに高い省エネ性能を目指す住宅(ZEH+)を新築・取得する人 |
補助・助成金額 | ・『ZEH』・Nearly ZEH ・ZEH Oriented :55万円/戸 ・『ZEH+』・Nearly ZEH+:100万円/戸 ※ハイグレード仕様・対象設備設置による追加補助あり |
LCCM住宅整備推進事業 | |
補助対象 | 住宅の建設時から居住、廃棄まで住宅のライフサイクル全体の中でCO2の収支をマイナスにする住宅(LCCM住宅)を新築する人 |
補助・助成金額 | ①と②の合計額の1/2(上限額140万円/戸) ①設計費 ②建設工事などにおける補助対象工事の掛かり増し費用 |
東京ゼロエミ住宅導入促進事業 | |
補助対象 | 東京都が独自に設けた基準に沿った省エネ性能の高い住宅の新築・購入する人 |
補助・助成金額 | 水準A:240万円/戸 水準B:160万円/戸 水準C:40万円/戸 ※令和6年10月1日施行の新基準 |
参照:一般社団法人環境共創イニシアチブ「令和6年度ZEH補助金」
参照:東京都環境局「令和6年度東京ゼロエミ住宅導入促進事業」
●新築住宅への優遇税制
住宅ローン減税 | 一定の要件を満たすことで、年末時点の住宅ローン残高の0.7%を上限として、最大13年間所得税もしくは住民税の一部が控除される制度。 住宅性能・取得者に応じて最大35万円/年が控除 |
住宅取得資金に係る非課税措置 | 父母・祖父母など直系尊属から住宅購入資金の贈与を受けたとき一定金額までの贈与が非課税となる制度 ・一定の基準を満たした住宅:1,000万円 ・一般住宅:500万円 |
印紙税の軽減 | 不動産売買契約書や工事請負契約書作成時の印紙税が契約金額に応じて最大50%軽減される制度 |
登録免許税の税率軽減 | 住宅の新築や購入した際の登記手続きにかかる登録免許税の税率を軽減する制度 |
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ペアローン
ペアローンは、配偶者や親子など2人の収入で2本の住宅ローンを組む方法です。
4,000万円の借入金額を夫と妻それぞれ2,000万円ずつ契約するなど、必要資金を分けあえます。
ペアローンはそれぞれが独立した住宅ローンであるため、住宅ローン減税や団体信用生命保険もそれぞれ適用できる点がメリットといえます。
異なる金利タイプや団信特約の内容の住宅ローンを組み合せることも可能です。
ただし、ペアローンではお互いが相手の住宅ローンについて連帯保証人となります。そのため、一方が収入減などで返済できなくなった場合でも、もう一方の契約者が返済しなければならない点には注意が必要です。
また、離婚した場合でもそれぞれの住宅ローンの返済義務は続くため、権利関係が複雑になる可能性があります。
収入合算(連帯保証型・連帯債務型)
収入合算は、主契約者の収入に配偶者の収入を合算して住宅ローンを組む方法です。
2人の収入を併せて住宅ローンを借りられるため、単独で借り入れする場合より借入可能額が増えたり、審査が通りやすくなります、
収入合算には、連帯保証人として収入合算する連帯保証型と連帯債務者として収入合算する連帯債務型があります。
多くの金融機関が採用する連帯保証型の場合、連帯保証人は住宅ローンの債務者ではないため、団体信用生命保険も住宅ローン控除も対象とならない点には注意が必要です。
そのため、連帯保証人が亡くなっても住宅ローンの債務には影響しません。
配偶者の収入をいくらまで合算できるかは金融機関によって異なるため、収入合算のタイプや利用条件を確認しながら住宅ローン商品を選ぶことが大切です。
まとめ:4,000万円の家を買える人の年収は496万円~620万円
無理のない返済負担率から試算した場合、4,000万円の家を買うときに必要な年収の目安は、496万~620万円となりました。
返済負担率を何%までに抑えるか、利用する住宅ローンの金利水準によって必要年収は異なります。
多くの方が利用する変動金利タイプでは金利が低い分、必要年収も少なくなりますが、購入後における金利上昇の影響について確認しておくことが大切です。
また、ペアローンや収入合算を利用して住宅ローンを組む場合、それぞれのメリット・デメリットを理解し、配偶者の収入の推移も踏まえての判断が必要です。
住宅ローン返済は長期間に渡りますので、返済期間中の家計の変化も考慮しながら無理のない返済プランを立てましょう。
吉満 博
ゼネコン、ハウスメーカーで建築設計に従事後、自身の住宅購入をきっかけに不動産売買事業を始める。不動産の購入から売却まで出口戦略、資産性踏まえた長期の視点で不動産コンサルティング・売買仲介サービスを提供。これまでの実務経験を活かし、2023年から不動産・金融メディア中心にライターとしても活動。自身のサイトで不動産売買や住宅ローン等のお役立ち情報発信。
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