

マンションと戸建ての維持費はいくら?費用を抑えるポイントも解説
マンションか戸建てで迷っているときに、判断基準の一つとなるのが維持費の違いです。 マイホーム購入後は、住宅ローン返済に加え、固定資産税、火災保険料、メンテナンス費用の積み立てが必要です。 この点、戸建てと異なり、マンションには専有部分と共用部分があり、共有部分の維持管理は管理組合で行います。そのため、マンションと戸建てでは、購入後の維持費の負担は異なります。 住宅ローン返済に加え、購入後の維持費を含めた住宅コストを把握することで、マンションと戸建ての判断がしやすくなるだけでなく、無理のない購入予算を把握しやすくなるでしょう。 この記事では、マンションと戸建てで維持費の違いを30年間のトータルコストの比較シミュレーションを含めて解説します。
目次
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マンションと戸建てに共通する維持費

はじめに、マンションと戸建てに共通する維持費について解説します。
- 固定資産税・都市計画税
- 火災保険料・地震保険料
- 修繕費(内装のリフォーム費用)
固定資産税・都市計画税
固定資産税は、毎年1月1日時点の土地、建物の所有者に対して、市区町村が課税する地方税です。
また、都市計画税は、都市計画事業や土地区画整理事業の財源として、市街化区域内の土地・建物の所有者に課される税金です。
固定資産税・都市計画税それぞれの算出方法は、以下のとおりです。
- 固定資産税額=固定資産税評価額×税率(原則1.4%)
- 都市計画税=固定資産税評価額×税率(0.3%)
固定資産税・都市計画税は、毎年4月から5月頃にかけて届く納税通知書をもとに、当該年度分を一括あるいは4期に分けて支払います。
火災保険料・地震保険料
火災保険は、火災のほか台風や集中豪雨、落雷などの自然災害に備えるための保険です。住宅ローンを利用する場合は、加入が必須となります。
また、地震に備える地震保険料は、火災保険契約者の約7割が加入しています。
保険料は、建物の構造や防火性能などで変わり、通常ではマンションより戸建てのほうが高くなります。
また、マンションの場合、個人で保険をかけるのは専有部分(居住スペース)のみです。マンションのエントランスや廊下、外壁、バルコニーなどの共用部分は、管理組合として保険に加入します。
火災保険料は、補償内容が多いほど、また保険金額を高く設定するほど増加します。購入エリアや立地に応じて、適切な補償内容を設定することが重要です。
参照:損害保険料率算出機構「グラフで見る!地震保険統計速報」
修繕費(内装のリフォーム費用)
修繕費のなかでも、内装のリフォーム費用は、マンション、戸建てに共通してかかる費用です。
マンションの外壁や屋根、バルコニー、廊下など共用部分の補修・メンテナンス費用は、毎月の修繕積立金として徴収されます。
他方、専有部分のリフォーム費用、例えば、給湯器の交換やキッチン・浴室などの水回りのリフォームは各戸で行うため、その分の費用を別途準備しておくことが必要です。
一方一戸建ては、屋根や外壁を含めて修繕・メンテナンスはすべて、自分で実施時期や箇所を判断して行います。
マンションだけにかかる維持費

次に、マンションだけにかかる維持費について解説します。
- 管理費
- 修繕積立金
- 駐車場・駐輪場代
- その他の使用料
管理費
管理費は、マンションの共用部分の維持・管理のために徴収されるお金です。
管理費が活用される費用として、以下があります。
- 管理員の人件費
- (共用部分の)公租公課
- エレベーターなど共用設備の保守・点検費用
- エントランスや廊下、庭など共用部分の光熱費や保険料
- 管理組合を運営するための経費など
多くのマンションでは、管理業務を管理会社に委託しているため、管理費の多くは管理委託費に活用されます。
国土交通省のマンション総合調査によると、1戸当たりの管理費は、月額11,503円(使用料・専用使用料からの充当額を除く)です。
また、1㎡当たりの管理費の平均は158.6円/月であり、専有面積ごとの管理費目安は以下のようになります。
専有面積 | 毎月の管理費 |
70㎡ | 11,102円 |
85㎡ | 13,481円 |
100㎡ | 15,860円 |
修繕積立金
修繕積立金は、一定期間ごとに行うマンション共用部分の大規模修繕工事に備えるために徴収されるお金です。
管理組合で作成する長期修繕計画に基づき、外壁や屋根、バルコニー、エントランスなど共用部分の経年劣化や不具合に対する修繕費用として使われます。
国土交通省調査によれば、修繕積立金の平均は月額13,054円です。
また、1㎡当たりの修繕積立金は181.9円/月であり、専有面積ごとの目安は以下の通りです。
専有面積 | 毎月の修繕積立金 |
70㎡ | 12,733円 |
85㎡ | 14,552円 |
100㎡ | 18,190円 |
駐車場代・駐輪場代
駐車場代・駐輪場代は、駐車場あるいは駐輪場を借りるときにかかる費用です。
駐車場の料金は、マンションの立地や平置き、機械式など駐車場のタイプによって異なります。駅近など立地重視で建てられるマンションの場合、総戸数に対して必要な駐車台数の確保が難しいケースも珍しくありません。
その場合、平置きより機械式駐車場の割合が高くなる傾向ですが、機械式駐車場の割合が高いマンションは、メンテンナンス費用がかかりやすく、修繕積立金も高くなる傾向です。
その他の使用料
その他、購入する部屋によって専用庭(1階)、ルーフバルコニーの使用料などがかかります。
専用庭やルーフバルコニーは共用部分ですが、その住戸を購入した人に専用使用権が認められるスペースです。
広さによって異なりますが、専用庭の場合は月額数百〜1,000円程度、ルーフバルコニーの場合は1,000~2,000円程度です。
また、一般的には無料ですが、マンションによっては各住戸の共用部分付近に設けられたトランクルーム(収納)の使用料がかかるケースもあります。
戸建てだけにかかる維持費

戸建ての場合、屋内だけでなく外壁や屋根のメンテナンス費用を計画的に積み立てることが必要です。
一般的には、新築からおよそ15~20年程度で、外壁や屋根の塗り替えなどが必要です。
アットホーム株式会社が、新築一戸建てを購入した人に行った調査では、住宅修繕にかかった費用は、平均の築年数38.0年で615.1万円となっています。
これは木造のほか鉄骨造や鉄筋コンクリート造も含めた結果ですが、木造住宅だけでみた場合の場合、築30~34年でおよそ600万円の修繕費用となっています。
これを毎月の費用に換算すると、およそ15,000~17,000円の修繕費の積み立てが必要です。
特に、修繕費用が高い箇所は、外壁と屋根、お風呂、キッチンです。
修繕箇所 | 修繕費合計の平均 | 1回目の修繕時の築年数平均 |
外壁 | 138.3万円 | 18.8年 |
屋根 | 113.8万円 | 21.7年 |
お風呂 | 95.4万円 | 22.7年 |
キッチン | 94.9万円 | 23.7年 |
参照:アットホーム株式会社「2023年『一戸建て修繕』の実態調査」
新築で購入してから1回目の修繕時期を迎えるまで、修繕箇所によって違いはありますが、給湯器は16.7年、その他の箇所はおよそ築20年を経過すると修繕時期を迎える傾向です。

マンションと戸建てにかかる維持費はどちらが高い?変わらない?

マンションと戸建てにかかる維持費を比較した場合、購入物件によって異なるため一概にはいえませんが、マンションのほうが高くなることが多い傾向です。
これは、以下2つの理由が考えられます。
- 木造の戸建てより耐用年数の長いマンションの固定資産税・都市計画税が高い傾向にある
- 共用部の設備(エレベーターや機械式駐車場、宅配ボックスなど)の維持管理費用がかかる
以降で、マンションと戸建ての30年間の維持費をシミュレーションで比較してみましょう。
マンションと戸建てにかかる維持費を30年間で比較

以下の前提条件で、マンションと戸建ての30年間の維持費を比較してみました。
【前提条件】
3LDKのマンション(専有面積75㎡想定)
- 固定資産税・都市計画税:15万円/年
- 火災保険料・地震保険料(5年間総額):9万円
- 管理費:11,900円/月(専有面積75㎡×158.6円/㎡で算出)
- 修繕積立金:13,600円/月(専有面積75㎡×181.9円/㎡で算出)
- 修繕費用(専有部分):200万円
戸建て
- 固定資産税・都市計画税:12万円/年
- 火災保険料・地震保険料(5年間総額):15万円
- 駐車場使用料:0円/月※敷地内に確保
- 修繕費用:595万円(アットホーム株式会社の調査をもとに設定)
マンションと戸建ての維持費比較(30年間)
マンション | 戸建て | |
固定資産税 | 540万円 | 432万円 |
保険料 | 54万円 | 90万円 |
管理費 | 428万円 | - |
修繕積立金 | 498万円 | - |
修繕費用 | 200万円 | 595万円 |
合計 | 1,720万円 | 1,117万円 |
※固定資産税や保険料、修繕積立金などの変動は考慮していません
30年間の維持費総額は、マンションが戸建てより約600万円高くなります。月当たりに換算すると、およそ16,000~17,000円の違いです。
このシミュレーションには駐車場代や駐輪場、専用使用料は含まれていないため、車を保有する場合、さらに差が拡がる可能性があります。
マンション・戸建て購入後の維持費を考えるときの注意点

マンション、戸建てそれぞれの維持費を考えるうえで注意しなければならない3つの点を解説します。
- マンションの修繕積立金は上がる
- 専有面積や敷地面積で維持費は変わる
- 収入に占める住宅コストの割合を考えてみる
マンションの修繕積立金は上がる
マンションの修繕積立金は、段階的に上がることを想定しておく必要があります。
マンションの修繕積立金の徴収方法には、「段階増額積立方式」と「均等積立方式」があります。
竣工当初からできるだけ早い段階で毎月均等に積み立てる「均等積立方式」に対して、段階的に金額を上げる方式が「段階増額積立方式」です。
マンション総合調査では、令和2年完成以降のマンションのおよそ85%が段階増額積立方式を採用しています。
そのため、購入当初はそれほど負担に感じない修繕積立金でも、のちのち値上がりすることを想定しておきましょう。
また、長期修繕計画では、大規模修繕工事以外の想定していなかった補修工事やグレードアップ工事が発生する場合もあります。当初計画の積立金では不足する、あるいは大規模修繕工事を実施するために修繕積立一時金が必要となるケースもあるでしょう。
なお、新築分譲時の修繕積立金の設定価格が低すぎると、のちのち修繕積立金の増額幅が大きくなります。
専有面積や敷地面積で維持費は変わる
専有面積や敷地面積によって固定資産税の額が変わります。
また、マンションの場合、一般的に持分割合(専有面積)に応じて管理費や修繕積立金が決まるため、専有面積が広いほど管理費や修繕積立金も高くなります。
そのため、購入時の物件価格だけでなく、購入後の維持費を踏まえて土地の広さや専有面積、間取りを考えることが大切です。
特に、木造の戸建てと比べて耐用年数の長いマンションは、築年数が経過しても固定資産税は変わりにくいです。さらに、修繕積立金も築年の経過に合わせて高くなることが考えられるため、慎重に判断しなければなりません。

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収入に占める住宅コストの割合を考えてみる
マイホームを購入するときの住宅ローン借入金額を判断するための指標として、返済負担率があります。
返済負担率とは、1年間の住宅ローンその他の返済額が年収に占める割合であり、20~25%が無理のない借入金額の目安です。
マイホームを購入する場合、返済負担率だけでなく、住宅ローン返済と維持費の負担を合わせた住宅コストを考えることでお金の面での失敗は少なくなります。
収入に対してどれくらい住宅コスト(費用)がかかるかを考えることで、無理のない購入予算や住宅ローン借入金額を判断しやすくなるでしょう。

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マンションの維持費を抑えるポイント

マンションの維持費を抑えるためには、維持費が高くなりやすいマンションの特徴を押さえることが大切です。
一戸当たりの維持費が高くなりやすいマンションの特徴として、以下の点が考えられます。
- 総戸数・階数
- 共用設備の充実度
マンション総合調査をみると、総戸数30戸以下のマンションは、管理費、修繕積立金ともに高い傾向です。
これは、総戸数が少ない分、工事発注時のスケールメリットが活かしにくい点なども影響していると考えられます。
また、一般的にタワーマンションと呼ばれる20階建て以上のマンションは、管理費・修繕積立金とも高い傾向が見られます。
その他、ラウンジやゲストルーム、コンシェルジュ、ジムなど共用施設が充実しているほど維持管理の費用や人件費がかかるため、管理費、修繕積立金が高くなりやすいといえます。
こういった維持費がかかりやすいマンションの特徴を踏まえた物件選びをするといいでしょう。
戸建ての維持費を抑えるポイント

戸建ての場合、マンションのような長期修繕計画はないため、どのタイミングでどこまで修繕するかを自分で判断する必要があります。
戸建ての維持費を抑える3つのポイントについて解説します。
- 耐久性の高い屋根・外壁材を採用する
- 維持費がかかりにくい間取りにする
- 保証やアフターサービスが充実した住宅会社を選ぶ
耐久性の高い屋根・外壁材を採用する
耐用年数が長い屋根や外壁材などの素材を採用し、修繕までの期間を長くし修繕回数を減らすことで、長期的には修繕費用を抑えることができます。
外壁塗装の耐用年数は10~20年程度といわれますが、使用する塗料(ウレタン、シリコン、ラジカルなど)や外壁材によって変わります。
また、住宅の外壁材の主流であるサイディングの種類によって耐用年数やメンテナンス期間は異なります。
サイディングの種類 | 耐用年数 | メンテナンス期間 |
窯業系サイディング | 20~40年 | 10~15年 |
金属系サイディング | 20~40年 | 10~15年 |
木質系サイディング | 15~40年 | 3~10年 |
樹脂系サイディング | 20~50年 | 10~30年 |
また、採用する屋根材についても、耐用年数は異なります。
屋根材の種類 | 耐用年数 |
化粧スレート | 20~25年 |
ガルバリウム鋼板 | 30年程度 |
粘土瓦 | 50年以上 |
セメント・コンクリート瓦 | 30年程度 |
アスファルトシングル | 20~30年 |
戸建てを購入する際は、外観デザインも大切ですが、外壁や屋根材の耐久性やメンテナンスコストも含めて判断しましょう。
維持費がかかりにくい間取りにする
維持費がかかりにくい間取りにすることもポイントの一つです。
建物形状を四角形のシンプルな形にすることで、屋根や外壁の面積を減らせるためメンテナンス費用を抑えられます。
凹凸が多い形状であるほど、メンテナンスの際の足場を設置する面積や施工範囲が広がるため維持費はかかりやすくなります。
また、間取りのなかで、2階部分も含めてキッチンや洗面、バスなど水回りの設備をできるだけ集約することで、給排水管の距離を短くすることが可能です。
その結果、水回りのリフォームをする際に、配管の交換に要する材料費や工事費を節約できます。
保証やアフターサービスが充実した住宅会社を選ぶ
維持費を抑えるためには、保証やアフターサービスが充実した会社を選ぶことも大切です。
アフターサービスや保証が充実した会社であれば、劣化が進む前に補修箇所に早く気づけ、長期的に修繕費用を抑えることにつながります。
住宅会社を選ぶ際は、デザインや構造、間取りだけでなく、長期保証の期間、保証内容、定期点検期間などを比較したうえで選びましょう。

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まとめ:マンションや戸建ては維持費を含めたトータルコストで考えよう

マンションと戸建ての維持費を比べた場合、一般的にマンションのほうが維持費はかかりやすくなります。
また、新築住宅より中古住宅を購入するほうが、維持費はかかりやすいといえるでしょう。
そのため、購入する物件の築年数や構造、仕様のほか、中古マンションであれば大規模修繕の実施時期、中古戸建てであれば、屋根や外壁のメンテナンス時期を含めた購入判断が必要です。
マイホーム購入の維持費で大切なことは、住宅ローン返済と購入後の維持管理費を含めたトータルコストがどれくらいかかるかを把握することです。
東証プライム上場企業のハウスドゥグループが提供する建売住宅ブランド「SHIRO」では、購入後、長期の保証とアフターサービスを提供しています。
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吉満 博
ゼネコン、ハウスメーカーで建築設計に従事後、自身の住宅購入をきっかけに不動産売買事業を始める。不動産の購入から売却まで出口戦略、資産性踏まえた長期の視点で不動産コンサルティング・売買仲介サービスを提供。これまでの実務経験を活かし、2023年から不動産・金融メディア中心にライターとしても活動。自身のサイトで不動産売買や住宅ローン等のお役立ち情報発信。
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