野菜と果物の“花束”を、食や素材に向き合うきっかけに。生産者の思いも伝えたい
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野菜と果物の“花束”を、食や素材に向き合うきっかけに。生産者の思いも伝えたい

滋賀県の水と土で育った野菜や果物の良さを多くの人に知ってほしいと活動している和田直子さん。自身が病に倒れたことで食の大切さに気付き、栄養について学び、野菜や果物をブーケのように束ねる「ベジフルフラワー」のアーティストになりました。

病に倒れたことから食に関心を持ち、野菜ソムリエの資格を取得

滋賀県大津市生まれ、在住の和田さん。5年ほど前に自身のブランド「畑のハナタバ」を立ち上げてベジフルフワラーを制作・販売しているほか、ワークショップやアーティストの養成講座を開講して普及活動もしています。

「野菜」や「食」に関心を抱いたのは、30歳を前に病気になり、手術を受けたことがきっかけでした。入院生活を終えて退院したあと、気持ちや体調が安定せずに、しばらく療養生活を送ることに……。病気の原因が食生活というわけではなかったものの、これを機に、健康や食生活について考えるようになったと言います。

「もっと食について勉強したいと思いました。それでまずは栄養について学んで、野菜ソムリエプロの資格を取ったんです」。心と体の調子を整えながら、知識を身に付けていきました。

しかし、野菜ソムリエの資格を取得した後は、仕事に復帰。再び忙しくなり、食関連で目立った活動をすることはありませんでした。そんな和田さんの転機となったのがベジフルフワラーとの出合いです。

ベジフルフラワーに出合って、自分に何ができるのかわかった

花も好きでフラワーアレンジメントも習っていた和田さんは、野菜ソムリエ協会で「ベジフルフラワー」の資格があるのに気づくと、その最上位で、技術を教えることもできる「ベジフルフラワーアーティストプロフェッサー」の資格を取得。滋賀の野菜と果物だけを使ったベジフルフラワーアーティストとして活動するようになります。

「ベジフルフラワーアーティストの資格を取ってから、私に何ができるのだろうと、真剣に考えるようになりました。野菜ソムリエは“生産者と消費者をつなぐ架け橋”と言われているんですが、私は生産者の現場を知りませんでした」

まず作物ができる現場を知ろうと考えた和田さん。実際に生産者を訪ねて畑を見せてもらったり、作業を手伝いに行ったりするように。あらためて生産者と交流するようになって感じたのは、地元滋賀の良さでした。

「滋賀で農業をされている方は、水や土といった環境へのこだわりがとても強いと思います。畑や田んぼで使った水が琵琶湖に流れるとわかっていますから、できるだけ環境に負荷がかからないようにという意識が高く、農薬をできるだけ使わないようにしている人も多いんです」

気づいたことがもう一つ。それは農作物が消費者の手に届くまで、大変な時間と手間がかかっていること。「台風や夏の暑さなど、思った以上に生産者の仕事は過酷。野菜が口に入るまでに生産者の方はこんなに時間をかけて育ててくれていたのかと……。もっとそのことを伝えたいと思っています」

小さな余白の積み重ねが、大きな変化を生んでくれる

多くの人に生産者が手間暇かけて育てた滋賀県産の野菜や果物を知り、食べてもらう手段として、ベジフルフラワーが役立つと考えた和田さんは、この活動がライフワークに。ワークショップを開催するときには、自身で生産者や直売所をまわって野菜を一つひとつ選び、参加者には食べ方も含めて丁寧に説明します。

「ベジフルフラワーは見て美しいだけではなく、食べるところまでがセット。野菜なので飾っておくことはあまりできないため、新鮮でおいしいうちに食べてもらいたい。ですからボイルするなど手軽にさっと野菜の美味しさを引き出して食べる方法をお話しています」

こうして野菜や果物と向き合い、食と素材について考える時間をもたらしてくれるのが、ベジフルフラワーの魅力だと和田さん。

「普段料理するときには、さっと洗って、ザクザクッと切るだけですよね。ベジフルフラワーをするようになって、野菜をよく見るようになりました。根っこ、断面、葉の形もかわいいんです。ちゃんと見ると、色や形がこんなに違う。慌ただしく過ぎる暮らしのなかで、ちょっと時間を取って、こうして素材と向き合うこともかけがえのない時間です」。野菜を見つめる時間はほんの一瞬かもしれません。でも、「美味しそうだな」「どうやって食べようかな」と考える時間も、いわば暮らしの小さな余白。この積み重ねが健康への気遣いにつながるのです。

野菜へのアプローチが変わることで、子どもの野菜嫌い対策にも

ベジフルフラワーが子どもの野菜嫌いに一役かっているという声も。「親子で楽しんでもらうのもいいと思うんです。こうしてブーケになっていたり、実際作って野菜に触れてみたり。アプローチが変わると親しみやすさが変わりますから、普段お野菜を食べない子が、ベジフルフラワーをきっかけに食べるようになったりするそうですよ」

現在、ベジフルフラワーアーティストとしての活動のほか、野菜の販売や夫が営む近江牛レストラン「グリル漣」を手伝うなどハードな毎日。食についてじっくり考える時間は?と聞くと、「今は、あまりとれていないかな」と笑います。それも「~しなくてはならない」と決めつけずに、今大切だと思うことに向き合うことを大切にしている証。

「野菜ソムリエだからって、野菜しか食べないというわけではないんですよ! ラーメンとかも食べます(笑)。もちろんできるだけ気を配っていますが、あまり厳密にしすぎると、逆に良くないと思っていて。でもやっぱり時間的な余裕はもう少し欲しいですね。献立を考えたりするゆとりがなくなりますから。今少し疲れたときに、気持ちの切り替えになるのは、自宅で待つ猫たちと触れ合いくらいかな」とちょっと反省も。

そして地元・大津について尋ねると「暮らしやすい」の一言。「大津駅の周辺にお店もできていて、まちをよくしたいと思う人が増えてきたと思います。京都や大阪へのアクセスもいいいし、そして何より琵琶湖が近い。琵琶湖の近くで育ったので琵琶湖にすぐに行けることは必須です!」と生まれ育ったまちへの愛着もひとしお。病を乗り越えて出合ったベジフルフラワーを通して故郷・滋賀の食材を発信し続けます。

和田直子

1978年生まれ。滋賀県大津市出身。一般社団法人 日本野菜ソムリエ協会 野菜ソムリエプロ、ベジフルフラワーアーティストプロフェッサー、ベジフルフラワーアーティスト養成講座滋賀校 主宰。病気をきっかけに食べるものの大切さを実感し、野菜ソムリエの資格を取得。ベジフルフラワーの講師資格を取得し県内各所で多数のワークショップや教室を開催する。

畑のハナタバ

ワークショップで参加者がつくったブーケを見てみると、材料は同じなのに、仕上がりは千差万別。個性の現れたでユニークな仕上がりに、やってみたいなという気持ちが起こりました。「ブーケにして食べるまでがベジフルフラワーです」と和田さんが言うように、これが食べられると思うとさらに心躍ります。しかも、これは、滋賀の生産者が愛情をかけて、滋賀の土と水で育てた作物。まるで滋賀を花束にしたような素敵な贈り物は、受け取った人の心も豊かにしてくれることでしょう。

編集=文と編集の杜
取材・文・撮影(ワークショップ)=瓜生朋美
撮影=畑中勝如

KEYWORDS

  • #和田直子
  • #滋賀に住む人
  • #余白のある暮らし

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