建売住宅の住宅ローン控除についてわかりやすく解説【2024年版】
建売住宅の購入を検討するにあたって、ローンの活用は誰しもが視野に入るでしょう。その中でも住宅ローン控除は、少しでも減税するために欠かせない制度です。 とはいえ、この制度は誰しもが利用できるものではありません。利用条件を満たしている必要があります。 果たして自分は条件を満たしているのか、利用できる場合にどれくらいの経済的なメリットがあるか気になるでしょう。 そこでこの記事では、建売住宅における住宅ローン控除についてわかりやすく解説します。2024年以降の適用条件や控除額、必要書類や手続き、実際のシミュレーション例なども紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
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建売住宅の住宅ローン控除とは?
住宅ローン控除とは、住宅ローンを利用して住宅を取得等した場合に、13年あるいは10年間、毎年の住宅ローン年末残高の0.7%を上限として、所得税あるいは住民税の一部が控除される制度です。
13年あるいは10年という長期間にわたり、所得税や住民税が還付されますので、経済的メリットは大きいといえます。
住宅ローン控除は、正式には「住宅借入金等特別控除」といい、1972年に導入されて以来適用条件や控除額などの見直しが繰り返されてきましたが、2024年から住宅ローン控除の適用条件が変わっています。次章より詳しく解説します。
住宅ローン控除の限度額と控除期間
住宅ローン控除によって、どれくらいの所得税あるいは住民税の還付を受けられるのでしょうか。ここでは控除額のシミュレーション事例も含めて解説します。
新築住宅の場合
住宅ローン控除は中古住宅にも適用されますが、ここでは新築住宅についてのみ解説します。
2024年以降、住宅ローン控除の対象である最大控除額は、購入した新築住宅の性能によって大きく変わりました。
住宅性能に応じた住宅ローン最大控除額を下記にまとめています。
住宅性能 | 2022年・2023年 | 2024年・2025年入居 | 控除率 | 控除期間 |
---|---|---|---|---|
認定長期優良住宅 | 5,000万円 | 4,500万円 | 0.7% | 13年間 |
ZEH水準省エネ住宅 | 4,500万円 | 3,500万円 | 0.7% | 13年間 |
省エネ基準適合住宅 | 4,000万円 | 3,000万円 | 0.7% | 13年間 |
(省エネ基準に適合しない)その他の住宅 | 3,000万円 | 0(例外あり) | 0.7% | 13年間 |
表を見て分かるように、2023年までと比べすべての住宅について、住宅ローン最大控除額が減っていることが分かります。
省エネ基準に適合しないその他の住宅については、住宅ローン控除の適用外となりました。
変更の背景には、2025年4月に予定されている改正建築物省エネ法施行があります。同法が施行されると、原則としてすべての建築物について省エネ基準への適合が義務化される予定です。
2024年からの住宅ローン控除の変更は、これに先立ち住宅の省エネ基準適合率の向上を図る観点から実施されるものです。
ただし、子育て世帯・若者世帯※については、その他の住宅を除き2023年までの住宅ローン最大控除額がそのまま維持されます。
※子育て・若者世帯とは、夫婦のいずれかが40歳未満の者又は19歳未満の扶養親族を有する者
ここまで住宅ローン最大控除額を解説しましたが、最大控除額と実際の控除額は異なります。
実際の控除額をシミュレーション
実際の住宅ローン控除額は、最大控除額だけでなく、年収つまり支払っている所得税や住民税額と借入金額(年末時点の住宅ローン残高)によって変わります。
ここでは、ZEH水準省エネ住宅を購入し、住宅ローン4,000万円を借入した場合の実際の控除額をシミュレーションしてみます。
【シミュレーション条件】
- ZEH水準省エネ住宅(4,000万円)を購入し2024年に入居する子育て世帯
- 住宅ローン借入金額:4,000万円 借入期間:30年
- 住宅ローン金利:年1.00%(元利均等返済)※2024年7月から返済開始
- 支払っている所得税額(年間):22万円 住民税額(年間):32万円
下表は、4,000万円の借入以後、初年度から13年目までの年末時点の借入残高とその年の控除額の上限をまとめたものです。
年末時点の住宅ローン残高 ※1,000円未満は切り捨て | 控除額上限 (住宅ローン残高×0.7%) | |
---|---|---|
1年目 | 3,942万円 | 約27.5万円 |
2年目 | 3,827万円 | 約26.7万円 |
3年目 | 3,710万円 | 約25.9万円 |
4年目 | 3,592万円 | 約25.1万円 |
5年目 | 3,473万円 | 約24.3万円 |
6年目 | 3,353万円 | 約23.4万円 |
7年目 | 3,232万円 | 約22.6万円 |
8年目 | 3,109万円 | 約21.7万円 |
9年目 | 2,985万円 | 約20.8万円 |
10年目 | 2,860万円 | 約20.0万円 |
11年目 | 2,734万円 | 約19.1万円 |
12年目 | 2,606万円 | 約18.2万円 |
13年目 | 2,477万円 | 約17.3万円 |
子育て世帯がZEH水準省エネ住宅を購入した場合の最大控除額は、4,500万円です。そのため、毎年の住宅ローン最大控除額は、4,500万円×0.7%=31.5万円/年となります。
ただし、実際の住宅ローン控除額は、毎年年末時点の借入残高に控除率0.7%を乗じたものが上限です。そのため、実際の控除額の上限は表のようになります。
納めている所得税額(22万円)が13年間変わらない前提ですが、1年目から7年目までは控除額の上限が22万円を超えており、控除しきれない分は住民税(最大9.75万円)から控除されます。
ただし、住宅ローンの返済が進み残高が減るにしたがって控除できる上限金額も減りますので、8年目以降は住民税からの控除はなくなる見通しです。
このように実際の控除額は、借入金額や収入によって最大控除額とは異なることは理解しておきましょう。
住宅ローン控除の対象となる住宅
2024年から住宅ローン控除の対象となる住宅は省エネ基準を満たしたものであることが必要です。
ここでは省エネ基準を満たす住宅の条件、証明するための手続きについて解説します。
原則、省エネ基準適合住宅以上であること
住宅ローン控除の対象となる省エネ基準適合住宅は、次の3つです。
- 認定長期優良住宅・認定低炭素住宅
- ZEH水準省エネ住宅
- 省エネ基準適合住宅
認定長期優良住宅は、長期にわたり良好な状態で使用するための措置が講じられた住宅として所管行政庁に認定を受けものです。劣化対策や耐震性、省エネ性能や維持管理などの項目について審査を受け認定を受けます。
認定低炭素住宅は、省エネ基準を超える省エネ性能をもち低炭素化のための措置が講じられた住宅として所管行政庁から認定を受けたものです。
さらに、ZEH水準省エネ住宅は、日本住宅性能表示基準における、断熱等性能等級(断
熱等級)5かつ一次エネルギー消費量等級(一次エネ等級)6の性能を有する住宅です。
これらの省エネ基準に適合しない新築住宅は、原則として住宅ローン控除の対象となりません。ただし、例外的に以下の条件を満たすことで対象となります。
- 2023年12月31日までに建築確認を受けたこと
- 2024年6月30日までに竣工済みであること
なおこの条件を満たした場合でも、住宅ローン控除を活用した際の借入限度額は2,000万円、控除期間は10年間です。省エネ基準を満たした住宅と比べて金額は小さいです。
省エネ基準適合住宅であることの証明書
住宅ローン控除の利用可能な基準に合致する住宅の証明書として、下記の書類が必要です。
認定長期優良住宅もしくは認定低炭素住宅の場合、次のいずれかの証明書が必要です。
- 都道府県・市区町村等の認定通知書の写し
- 市区町村の住宅用家屋証明書もしくはその写しまたは建築士等の認定長期優良(または認定低炭素)住宅建築証明書
また、認定住宅ではないものの、基準に合致する住宅であるといった証明書には、以下のいずれかが求められます。
- 建設住宅性能評価書の写し※設計住宅性能評価書では申請不可
- 住宅省エネルギー性能証明書
建設住宅性能評価書は、住宅性能表示制度に基づいて、国に登録された第三者機関が住宅の性能を建設段階で確認したものです。評価書の項目のうち、「断熱等性能等級」が4以上、かつ「一次エネルギー消費量等級」が4以上であることを証明するものが必要です。
いずれも、住宅を購入した人が単独で取得することは困難であるため、設計者・施工者の協力が必要となります。
参照:国土交通省|住宅ローン現在における省エネ性能の必須要件化について
SHIROの建売住宅では、住宅性能表示制度の断熱等性能等級は4以上かつ一次エネルギー消費量等級は4以上で計画しており、住宅ローン控除を利用して頂けます。
高機能窓サッシやLow-E複層ガラスを採用するなど省エネ性能にこだわった建売住宅です。資金計画や住宅性能についてもお気軽にご相談ください。
住宅ローン控除の主な適用条件
住宅ローン控除を適用するには、住宅性能以外にもいくつかの条件を満たす必要があります。ここでは、2024年1月1日から2025年12月31日までに住宅を取得した場合の主な適用条件について解説します。
- 住宅ローンの返済期間が10年以上あること
- 床面積(登記簿上)が50㎡以上※1
- 控除を受ける年の所得金額が2,000万円以下※2
- 床面積の1/2以上が自己の居住用のものであること
- 住宅取得後6ヶ月以内に入居し、引き続き居住していること など
※1 2024年12月31日までに建築確認を受けた新築住宅等は40㎡以上
※2 床面積が40㎡以上50㎡未満の場合は1,000万円以下
参照:国税庁|No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)
住宅ローン控除の申請手続き
住宅ローン控除の申請手続きならびに必要書類について解説します。
初年度の住宅ローン控除には確定申告が必要
初年度の住宅ローン控除の手続きは、入居した翌年に確定申告(2月16日〜3月15日)が必要です。
もし、年末などに住宅の引渡しを受けたものの入居(引越し・住民票の異動)が年をまたいだ場合は、入居した年の年末時点の住宅ローン残高から控除の対象となります。
また、2年目以降は年末調整で手続きが可能ですが、年末調整ができない人は確定申告が必要です。
なお、住宅ローン控除の手続きは、管轄の税務署でする以外にもスマホで電子申告が可能です。マイナンバーカードとマイナンバーカード読み取り対応のスマホが必要ですが、オンライン上で確定申告書を作成・送信することで、税務署に足を運ぶことなく自宅で手続きが可能です。
住宅ローン控除申請に必要な書類
住宅ローン控除の申請には、源泉徴収票、本人確認書類の写し以外に以下のような書類を準備する必要があります。
住宅借入金等特別控除額の計算明細書・確定申告書 | 売買契約書や登記事項証明書を参考に、購入した住宅の取得金額や床面積、住宅ローンの年末残高など必要事項を記入し、控除額を計算する書類。税務署もしくは国税庁のサイトからダウンロードできる。 |
住宅ローンの年末残高証明書 | 金融機関によって、融資残高証明書と記載される場合もある。万が一、年末残高証明書を紛失した場合は、早めに金融機関に再発行の手続きを済ませる。 |
登記事項証明書 | 居住面積の要件を満たすかの証明で必要。登記事項証明書は法務局で取得(オンラインでも可)できる。 |
売買契約書もしくは工事請負契約書の写し | 住宅の購入や購入金額の証明に必要。 |
省エネ基準の住宅性能を証明する書類(認定長期優良住宅通知書や建設住宅性能評価書の写し) | 住宅の省エネ性能を証明する資料として必要。住宅を購入した際に、売主や建築会社から取得するのが一般的。 |
住宅ローン控除に関するよくある質問
最後に、住宅ローン控除に関するよくある質問を紹介します。
- 住宅ローン控除はいつまで受けられる?
- 夫婦2人で住宅ローン控除は適用される?
住宅ローン控除はいつまで受けられる?
2022年度の税制改正により、住宅ローン控除は2025年12月31日入居まで延長が決まっています。
2026年以降も継続されるかは、現時点では分かりません。また、継続したとしても最大控除額や控除率、適用される住宅の条件などが見直しされる可能性があります。
なお、省エネ基準を満たさない新築住宅は、2024年から原則として住宅ローン控除は適用されません。
夫婦の収入で購入する場合に2人とも住宅ローン控除は適用される?
夫婦2人の収入で住宅ローンを利用する方法には、ペアローンと収入合算(連帯債務型と連帯保証型)があります。
ペアローンは、夫婦それぞれが住宅ローン契約者となり、必要な借入金額を分割して2本の住宅ローンを組む方法です。ペアローンはそれぞれが独立した2本の住宅ローンを契約する形であるため、それぞれが住宅ローン控除の条件を満たしていれば両方とも適用可能です。
一方、収入合算には、主債務者に連帯債務者の収入を合算する「連帯債務型」と住宅ローン契約者に連帯保証人の収入を合算する「連帯保証型」があります。
連帯債務型の場合、住宅ローン控除は2人の収入について適用可能です。一方、連帯保証型の場合、連帯保証人の収入については住宅ローン控除の対象にはなりません。
まとめ|建売住宅の住宅性能で住宅ローン控除の適用が決まる
2024年以降のマイホーム購入で住宅ローン控除を適用するには、省エネ基準に適合した住宅を購入する必要があります。
「認定長期優良あるいは低炭素住宅」「ZEH水準省エネ住宅」その他、省エネ基準に適合する住宅と、住宅性能によって最大控除額は違います。
ただし、最大控除額と実際に控除される額は異なり、実際の控除額は住宅ローン借入金額や納付する所得税などで変わる点には注意してください。
住宅ローン控除は、経済的メリットが大きな制度ですので、できるだけ有効活用できるよう物件選びや資金計画を考えてください。
建売住宅の諸費用はいくら必要?価格別シミュレーションで詳しく解説
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吉満 博
ゼネコン、ハウスメーカーで建築設計に従事後、自身の住宅購入をきっかけに不動産売買事業を始める。不動産の購入から売却まで出口戦略、資産性踏まえた長期の視点で不動産コンサルティング・売買仲介サービスを提供。これまでの実務経験を活かし、2023年から不動産・金融メディア中心にライターとしても活動。自身のサイトで不動産売買や住宅ローン等のお役立ち情報発信。
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